注: 2016 年オリンピックが閉幕したため、大会期間中のテレビ広告の成果を反映して、
開会式についての最初の投稿の分析情報を更新しました。
約 2 週間前に閉幕した 2016 年夏季オリンピック、大会期間中はアメリカ国内だけで推定
2,790 万人もの視聴者を獲得しました。そのテレビ広告では、目的のユーザー層に的確なアピールができたかどうか、多くの広告主たちは手に汗握りつつ見守っていたことでしょう。成果を確認するために広告主たちが注目する要素は、主に次の 3 つです。
- 視聴者に認知された広告は?
- 関心の向上、認識の変化、購買意欲の強化に貢献した広告は?
- 消費者から実際にレスポンスを引き出すことができた広告は?
こういった点に光を当てるため、Google は大会期間中に NBC ネットワークで CM を放映したブランドの中から上位 12 社を選んで、合計 35 億回を超えるインプレッションを対象に評価を行いました。分析のもとになっているデータは、
Google Consumer Survey の結果と、セカンド スクリーン(携帯電話、PC、タブレット)でのレスポンスのデータを組み合わせたものです。
Google データスタジオのダッシュボードとして公開されている分析結果を見てみると、評価対象の広告のパフォーマンスを目標到達プロセス全体にわたって捉えた、ユニークな視点が得られます。
認知
オリンピックのように大規模なスポーツ イベントの生放送では、視聴者数の多さとイベントのコンテキストを活かすため、しばしば専用のコマーシャルが製作されます。個々のアスリートの物語を紐解くものから、自分の国の選手を応援する気持ちを刺激するものまで、アプローチはさまざまですが、いずれも視聴者の感情に訴えること、楽しませること、注目させることなどが狙いです。
認知度向上においては
Nike の「Unlimited」広告が文句なしの金メダルです。回答者の 35% 近くが広告を見た記憶があると答えています(助成想起)。
四肢欠損者による初のキリマンジャロ登頂を題材とした広告を含め、Nike の優れた広告の想起率は一般的な水準である 20~25% を大きく上回っています。惜しくも 2 位となったのは、オリンピックと日常の瞬間を織り交ぜて描いた Coca Cola の「
That's gold」広告です。トップ 5 の残りを占めるのは
Tide、
McDonald's、
Samsung で、いずれもかなりの想起率を記録しています。この上位 5 社の広告想起率は、開会式後の最初の分析時と比べ平均 3 ポイント上昇しました。
|
回答者の 35% が Nike の広告を見た覚えがあると回答 |
なお、広告で取り上げられていた商品やサービスを具体的に思い出すことができたのは、広告を想起できた回答者の 37% にとどまっています。ある広告のブランドと商品の両方を思い出すことができる視聴者は、正味 13% 程度ということになります。商品の想起率が最も高かったのは、Tide の「
Small can be powerful」広告で、50% を少し上回りました。
関心
広告には、視聴者の認識を変化させ、商品やサービスに対する関心を創り出す目的もあります。今回の調査では、広告を見なかった視聴者(Unexposed)と見た視聴者(Exposed)の両方を対象にすることで、各広告のメッセージやクリエイティブが及ぼした影響の強さを分析することができました。結果は全体としてかなり優れたものでした。平均して、広告を目にした回答者が該当ブランドに対して持つ印象は、そうでない回答者と比べて 27% 好意的なものになっています。同様に、宣伝されていた商品について情報収集または購入する可能性も、広告を目にしていない回答者と比べて 32% 高くなっています。
大会期間中の好感度と購買意欲の伸びは、開会式中に測定された伸びと比べて、それぞれ 10 ポイント、12 ポイントと大幅に上回りました。
|
広告を目にした消費者は、そうでない消費者と比べて該当ブランドに対する印象が 25% 好意的で、 広告の商品について情報収集または購入する可能性は 28% 高い |
興味深いことに、基本的な好感度と購買意欲については、
オリンピックの公式スポンサーとそうでない企業との間に大きな差はありませんでしたが、スポンサーでない企業はスポンサー企業と比べて好感度の伸びが 3 ポイント、購買意欲の伸びが 7 ポイント上回りました。
意欲
これらのコマーシャルは、視聴者を笑わせたりブランドに対する好感度を高めたりするだけでなく、視聴者による検索やウェブサイト訪問を促進する効果も持ちます。いわゆる「セカンド スクリーン」での検索(広告との再エンゲージメント、目にした商品についての情報収集など)は、購買意欲の指標として非常に有効です。Google でアトリビューションによって広告との関連付けが可能な語句の検索が放送中にどれくらい増加したか調べることで、消費者のレスポンスへの影響も分析に含めることができます。オリンピック放送でのテレビ広告による検索の増加は、ほぼ完全にモバイルで起きています。その割合は実に 83%。同じブランド群でこれらの広告を放映していない時期の平均は 55% であり、大きな差が見られます。このことから、テレビでの露出の確保は、小型スクリーン向けの戦略としても一定の意味を持つと言えるでしょう。
広告を目にした結果として Google で行われた検索の 83% がスマートフォン、10% がタブレットでのものであることから、効果的なセカンド スクリーン戦略がテレビ広告の成功の鍵となります。
ここでの金メダリストは
BMW で、「
Performance wheelchair」など複数の商品を広告で取り上げ、反応強度指数は 3.21 でした。これに次ぐ成績で表彰台に立ったのは
McDonald’s と
Samsung。反応強度指数はそれぞれ 2.01 と 1.57 でした。「感情に訴える広告は商品の広告と同じ効果はあるのか?」という命題がありますが、今回の調査の範囲では答えは「イエス」でした。どちらのタイプの広告も、平均で 50% の検索数増加を引き起こしています。また、興味深いことに非スポンサーの広告によって発生した検索は、公式スポンサーの広告による検索を 17% 上回りました。
|
BMW の広告によって得られた検索数は、 調査対象となった 12 種類の広告の平均を 3.2 倍上回る |
最後に、目標到達プロセス全体を通したパフォーマンスという観点では、プロセスの 3 つのステージすべてでトップ 3 に食い込んだ Coca Cola の広告が総合優勝となりました。
オリンピックであれ普段の番組であれ、テレビを見ていて気になる情報があれば、視聴者はスマートフォンに手を伸ばします。広告主はこうした
マイクロモーメントを確実に捉えて広告を表示し、役立つ情報を提供して、視聴者の関心に応えられるようにする必要があります。つまり、テレビ広告を展開する際に、消費者アンケートやデジタルでのレスポンス追跡を組み合わせれば、目標到達プロセスの各段階でのパフォーマンスを見通す新たなデータを、それもわずか数日のうちに入手できるのです。こういった新しい分析手法を活用することで、テレビ広告をはじめとするさまざまなマーケティング活動の成果について理解を深め、デジタル メディアとの連携を前提に改良を加えていくことができます。
データ収集
Google Consumer Survey を広告の認知度と関心度の調査に利用し、2016 年 8 月 19~21 日の期間に、検証済みの代表サンプル(最小回答者数 700)を対象とする
オンライン調査をアメリカで実施しました。レスポンスについてのデータは、放送期間中にテレビ広告によって Google で生じた検索数の増加に基づくもので、対象となったのは
Google アトリビューション 360 を使ったモデリングによってコマーシャル放映の影響を受けたものと特定できる検索語句です。レスポンス データは、放送中の各広告主の広告インプレッションの合計を基準に正規化したものです。
Happy Analyzing!
投稿者: Casey Carey(Google アナリティクス マーケティング担当ディレクター)